WES News 29 2001年11月

女性委員会設立10周年を迎えて

委員長・大川友理枝

女性委員会は今年度で10周年を無事迎えました。これも皆様のおかげと感謝しております。10周年を記念いたしましてリレートークを開催し、あわせて「第13 回女性建築士との集い」として会員同士の交流をはかりたく懇親会を計画しています。一部では「なが~く暮らせるすまい」をテーマに、高齢者の住環境整備の実態調査のまとめと子供の生活環境 について女性委員会より、少子高齢化社会の住まい方について明治大学の園田眞理子先生、これからの住まいのストックについて東京理科大学の大月敏雄先生をお迎え して、リレートークを行ないます。更にそれぞれの視点から永く暮らせる住まいについて、意見交換を行ないます。ぜひ、皆様ご参加ください。

平成13年度高齢社会の住まいまちづくり研修会を終えて

今年も住宅改造ワークショップが好評

平成5年よりかながわ住まい・まちづくり協会・神奈川県福祉プラザ・開催地の協力を頂きながら実施しているこの研修会も、 今回で第9回目を開催することができました。今年は予算等のこともあり神奈川県総合リハビリテーション事業団が行なっていた 「快適な生活環境づくりセミナー」の研修会と合同で、開催地川崎市の協力も得て行なうことができました。3日間の研修は、 1日目の座学は川崎市立労働会館で、2日目は福祉プラザで福祉用具の研修と、午後からは七沢病院と神奈川リハ病院に移動し福祉用具の体験学習、 3日目は各病院のPT・OT、女性委員会からもアドバイザーとして加わり、症例にそった住宅改修のワークショップを行ないました。 建築関係者、福祉・医療関係者との合同のワークショップについての感想は、97.8%の方がたから好評の回答をいただきました。 またそれぞれの講義についても高い評価をいただきました。 皆様のおかげを持ちまして無事終了することができましたが、回を重ねる度に反省すること、改善しなければならないことが見えてきて 次回に反映させて行かなければと思っております。年々申込者が増えてきており、福祉部会会員の苦労もありますが今後もより充実した 研修会にしていくように努力をしていきたいと思っております。(福祉部会)
★参加者アンケートから
・他職種のかたとの連携の大切さを知りました
・レクチャーと実技訓練場所が分かれていてよかった
・実際に自分で装具をつけたり、車いすに乗ったり擬似体験 できたのがよかった
・職種によりアプローチの仕方が違うのがよくわかった
・またの機会にこれと同じような研修を受けたいと思う

バリアフリー住宅研究会から 

 高齢者・障害者の住宅改造には福祉・医療・行政・建築の連携が必要だということで、各分野の勉強会を行っています。
■第2回勉強会 8月11日(土)  参加者20名
福祉の分野から社会福祉士・介護支援専門員の原田聖子氏をお迎えしました。「住宅改造と介護保険」というテーマで、 介護保険制度の内容から住宅改修の流れと現状、介護支援専門員の役割についてお話していただきました。
■第3回勉強会 10月13日(土)  参加者16名
医療の分野から理学療法士の子安元子氏に「住宅改造と身体機能」というテーマでお願いしました。住宅改修の事例に多い脳卒中を中心に、 基礎知識として脳について、さらに具体的に麻痺がある方の身体機能、住宅改造にあたっての注意点についてお話していただきました。(雨森)

参加者の声~★目にみえないもの★

誰でもそうだと思うのですが、私のまわりにも障害を持った方が何人かいます。今まである程度障害者の立場に立って物事を考えてきた つもりでいました。  今回参加させていただき、例えば足に麻痺がある方が、1ミリの段差につまずく。階段とほぼ同じ所で終わっている手摺を 当たり前に思っていたけれど、身体に障害のある方には、それでは非常に使いづらいなど、まだまだ自分の気づかない事がたくさんある、 と勉強になりました。“銀行のCD機のタッチパネルが、目の不自由な方には使用できない”と言われます。“バリアフリー” と健常者は簡単に言うけれど、障害は一つではない。私たちに見えていない事がいっぱいある。全ての障害に対応できて初めて “バリアフリー”の一歩なのだと、もう一度考える機会を与えて下さった貴重な勉強会でした。(大津 宏伸)

~福祉のまちづくり合同研修~

昨年に引き続き、10月2日、5日の両日、横浜市職員研修所にて、市職員と当会会員、建築士会から呼びかけをした他団体の 建築関係従事者を対象に合同研修会が横浜市と共催で開かれました。この研修会は、「福祉のまちづくり条例」の内容の周知と啓発を図り、 公共施設や道路・公園などの都市施設を基本構想の段階から福祉のまちづくりの観点を取り入れ、誰もが生活しやすいまちづくりを 目指しているものです。午前は福祉局福祉のまちづくり課の岡田課長から条例について説明の後、グループに分かれて、車椅子体験、 高齢者擬似体験をしました。午後は横浜市総合リハビリテーションセンター職員による「福祉のまちづくり条例と設計における留意点」に ついての講演に続き、グループディスカッション及び発表で終了しました。参加者は、歩道を歩く、信号を渡る、トイレや自販機、 公衆電話などを利用する、といった日常生活を体験する為に、車椅子や高齢者疑似体験セット(イラスト参照)を装着した姿で街に出ます。 実際に体験すると、街の中がいかに「不便な環境」かが思い知らされ、又、整備基準の根拠を肌で感じ取る事が出来ました。“誰もが 生活しやすいまち”を目指すには、それぞれの立場で、街の中にあふれる「問題点」を少しでも減らす努力を続けるしかないと痛感しました。(成田)

よこはま住宅フェア 2001

秋晴れの、10月26日から3日間、みなとみらい21地区クイーンズスクエアで、「見つめてみよう、21世紀のやさしいくらし」 をテーマに“よこはま住宅フェア2001”が開催されました。当建築士会と神奈川県安全協会との合同ブースでは「なが~く暮らせる住まい」 をテーマに、安全協会の事業でもある品確法に関する紹介、住宅フェア実行委員会(横浜支部・女性委員会)からは、 ライフサイクルや健康に安心して暮らせる住まいのパネル展示を行ないました。中でも、士会横浜支部と共に知恵をしぼって出品した、 いろいろな樹種の丸太の、「木の名前は?」「主に何処に使われているの?」の質問には、たじろぎました。檜をスライスしたコースターの プレゼントに喜んで下さる方も多く、癒しの香りに包まれた3日間でした。(成田)

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歴史的木造建築見学会(2001年9月1日)

~松永記念館 老欅荘をたずねて~

江戸・明治から昭和初期の木造建築を学んで、木造建築の良さを再認識しようと始まった企画です。回を重ね、横浜の洋館や長屋門などの 見学会を催してきましたが、今年は初めて小田原を訪ねました。 小田原市板橋にある「老欅荘」(ろうきょそう)は電力王と言われた故松永安佐ヱ門氏の旧居で、この中の茶室に吉田茂氏らを招いて茶会を 開いていたそうです。 この建物は1946年(昭和21年)に建てられた数奇屋造りの平屋で、敷地面積2,366㎡、建築面積162㎡です。 当初、小田原市は老朽化を主な理由にこの建物を取り壊し、荘内の茶室・松下亭(しょうかてい)の再建と、以前隣接地にあった 黄梅庵の複製の建設を予定していました。しかし全面保存を求めて複数の市民団体が保存運動をし、市民の声の高まりを契機に保存・再生が 実現したものです。またこの建物は平成12年9月に国登録有形文化財となっています。 小田原ボランティアガイド協会の方のご案内で箱根板橋駅から松永記念館までの道のりを歴史的建物ウォッチングしながら歩き、 小田原再発見ができました。 参加者は16人でした。(桑山)

見学会に参加して
~電力王の質素な生活に日本の心~
石田尚見

人の生活様式の底流には必ず「文化」が存在し、生活にもっとも密着したもののひとつである住居はそうした文化の歴史を象徴しています。 茶室というのはそもそも室町時代に生まれ、「わび」「さび」といった極めて質素な、日本人の心の原点のようなものを表象したものです。 安土桃山時代に利休によって高められ、数百年の後に作られたこの「老欅荘」にしても、海外には存在しない日本人の心が宿っています。 電力王と言われるほど、おそらくは豊かな生活がありながら、これほどまでに質素な世界を追求するというのは、不況が叫ばれながら 飽食の時代と言われ、「癒し」が求められている現代の世風と重ねて見ないわけにはいきませんでした。

«老欅荘
箱根登山鉄道「箱根板橋」駅
下車徒歩10分
松永記念館内
▼ 松永記念館庭園にて

WESフォーラム

今時、中国の大学事情
間木宏美

友人が、留学しているのを機会に初めて訪ねました。北京市内から地下鉄とバスを乗り継いで30分程の、北京第二外語学院。 そこの留学生寮のゲストルームに泊まりました。寮の建物は木造2階建からRC造10階建位まで何棟もありました。部屋にはツインベッドに 洋タンスが2棹、机といすも2組、バスルームにバスタブはなくシャワーは天井固定型。8月中旬に行ったんですが北京の気温は連日38度位あり、 部屋には壁掛式エアコンがついていて助かりました。宿泊はホテルと同じ様に過ごせました。大学は夏休み中でしたが、授業がないだけで、食堂、 売店、美容院などは営業していました。というのも、その大学は敷地内に学生寮はもちろん、教授や関係職員が家族で住む為の住まいがあり、 教授は定年後も住めるそうです。夏休みを利用して工事が行なわれていましたが、その職人も学内に宿泊しているとのこと。 さて、学食へはマイ食器を持って行くんです。マグカップの2倍位の大きさのホーローのカップは豆乳や粥。 皿にはおかずや饅頭を入れてもらいます。柄の長いスプーンも個々で。学生は食堂の中にある棚に置いているようで、 壁に何百も食器が並んでいるのは圧巻でした。食器洗い用の流しには排水管がなく、流しの穴から下の溝に落ちていくので、足元は水浸しでした。 学食の味は・・・・ (T_T)

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熊本から~平成13年度
全国女性建築士連絡協議会に参加

熊本国際交流会館を会場に、7月13日(金)14日(土)に亘り、講演とパネルディスカッション、懇親会、分科会等が行われました。 講演では、宿谷昌則氏(武蔵工業大学環境情報学部教授)が環境共生について熱力学的・生物学的な視点から研究されたお話を、吉本哲郎氏(熊本県水俣市農林水産課長)は水俣病の犠牲を無駄にしない地域づくりの活動のお話を、藤本照信氏(東京大学生産技術研究所教授)は熊本アートポリスの建築家として熊本県立農業大学校学生寮を中心に氏の作品とスライドを見ながらお話を伺いました。 パネルディスカッションでは連合会女性委員長小谷部育子氏が加わり、テーマ「地域と共生する住環境づくり 地球環境から考える」について4氏で話が交わされました。

B分科会「環境共生関連」・大川友理枝

部会等として活動している士会がまだ少ないということでコメンテーターの福井士会は個人のシックハウス問題から 環境先進国ドイツへ行って学んできた事を実践しているという話を、北海道士会は雪をエネルギーにした「雪冷房マンション」の話を、 神奈川士会もコメンテーターとして参加し、平成12年13年と「女性建築士との集い」のテーマに「環境と共生する住まい」を取り上げ、 講演会を開催した話をしました。

F分科会「まちづくり関連」・酒井 凉子

各コメンテーターの活動報告は、福島から「庭咲きからはじめるまちづくり」、千葉から「バリアフリーの街(いには野)町並みウォッチングと シンポジウム」、京都から「みつめて京都」、東京から「福祉マップ作成のための調査」でした。 東京士会が千代田区社会福祉協議会の呼びかけに活動班として参加してできあがった「いきいきマップ千代田」は、福祉マップにとどまらず 「ガイドマップ」としても好評とのことです。 出席者が33人と2番目に多く、関心の高い分科会でもあり、他にも多数の活動が紹介されました。それぞれの地域の特殊性による活動の多様さは、 各参加者に共通する課題として受け止められたようです。

D分科会「高齢社会関連」・田隝 裕美

コメンテーターの群馬からは、平成5年からリフォームヘルパー制度を活用して取組んでいる「高齢者住宅研究班」、 また茨城からは平成10年からバリアフリー勉強会として「ケアらいふ研究会」からの活動報告がありました。時代を反映してか、 この会への参加者が一番多く、意見交換の場面ではそれぞれの県での取組み方や、他県への質問等もあり熱気ある情報交換が行なわれました。 当会としてもこの10年間の取組みについて、簡単に報告をいたしました。 次の日は午前中の全体会議を終えた後、乙女チック(?)な3人で、東シナ海に沈む夕日を見に出かけました。 温泉につかった後ビールで乾杯をし、海面を真っ赤に輝かせて地平線に沈む夕日を見送りながら、心も身体も癒される気分になれました。

仙台から
第44回建築士会全国大会(宮城大会)

出帆!開かれた未来へ
~みちのく宮城に集う、時代の提言者~

10月5日(金)仙台市内で開かれた全国大会に二人の佐藤が参加してきました。それぞれ関心のあるフォーラムに出席し、大会式典のあとは 名物を求めて仙台の町へ。翌日は松山へ行き、最後は東北大学片平キャンパスの近代建築群と晩翠堂を見学して帰途につきました。

「提案・心をつむぐ未来のくらし」
佐藤 里紗

築200年の古民家や昭和初期の町屋を保存・再生し 国登録文化財として誇りを持って使い続けている事例を通して、未来のくらしを提案しようというフォーラムでした。 いいものは時代を超えて生きていきますね。

「情報化時代の羅針盤」・佐藤 陽子

私が参加したフォーラムではCAD、CALS等にみられる先進IT関連の話題が中心で、つい先日横須賀市の電子入札がニュースになりましたが、 電子入札は2004年度44,000件全てで、入札と書類、図面等電子納品を実施することとしているとのこと。 更に国のみならず都道府県と政令都市、2010年度には地方自治体を含めた全ての工事を電子入札、電子納品を建設CALS/ECで行う予定に なっているとのこと。これについては会誌「建築士」をよく読んでいる方は判っていると思いますが、もっと勉強する必要がありそうですよ。

あとがき

振り向けば10年。WESニュースも創刊以来次号(№30)で丸10年です。感慨無量。

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