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藤沢駅北口から遊行通りを抜けて
旧藤沢宿の通りに出ると遊行寺橋のたもとに旧藤沢宿の案内板があります。
桔梗屋は江戸時代(嘉永年間)から茶・紙問屋を営んだ旧家です。7代目にあたる現在も、「桔梗屋洋紙」藤沢支店として営業中です。平成25年、店蔵、母屋、文庫蔵の3棟が登録文化財として答申されました。湘南地域は大正12年の関東大震災の被害が大きく、震災前の建物は希少です。
店蔵とは、火災による延焼を防ぐため柱や軒裏を土蔵のように土壁で塗りこめた店舗のことで、
幕末から明治にかけて江戸から広まりました。川越や栃木と同様、藤沢も関東大震災以前は多くの店蔵が建つ蔵の町でしたが、
現存するのは桔梗屋のみで、大変貴重です。梁間3間半、桁行4間2尺、平入の切妻屋根、桟瓦葺、奥行半間の下屋庇も桟瓦葺で、棟には屋号のヤマサンと入った鬼瓦が載っています。2階の軒は出桁で3段の軒蛇腹を巡らし、外壁と軒回りは黒漆喰塗り、窓は重厚な観音開き窓です。1階の店舗入口は当初吹き放ちで、火災の時だけ塗戸を立て込んだそうです。下屋境には揚げ戸が現存しています。店舗はかつてドマとチョウバがあり、2本の大黒柱(ケヤキ)の一つには震災時の傷跡が残っています。
また、母屋との境には「千人扉」といわれる観音開きの厚い塗籠戸があり、今でも開閉できます。
2階は物置で、天井を張らず小屋組を見せています。床には荷物の揚げ降ろし用の口があります。
母屋は店蔵と同時期に建てられたと思われ、屋根は切妻でトタン葺き、ゲンカンは商談の場でしたが、
ブツマ、オクザシキは生活の場で、床・違棚・平書院を備えた格の高い造りになっています。
台所・浴室等は後の増築です。
2階の増築部分は「一間洋館」風になっており、外観も洋間部分のみ外壁はモルタル塗りの大壁となっています。
文庫蔵は、梁間2間半・桁行6間の3階建で文久元年に建てられた質屋の蔵でしたが、大正10年に桔梗屋が譲り受けたものです。
3階の床は後補です。長年旧藤沢宿のシンボルとして人々に親しまれてきましたが、
東日本大震災で黒漆喰の壁が落ちるなどの被害があったことから、修理を検討することになり、
スクランブル調査隊のメンバーでもある邸園保全活用推進員により結成されたグループが現況調査を行ないました。
(参考:東海大学小沢朝江研究室資料)
<概 要>
名 称:桔梗屋(店蔵 母屋 文庫蔵)
所在地:藤沢市藤沢1-1-9
建設年:店蔵 明治44年(棟札による)
母屋 明治44年頃、大正末から昭和初期に増築
文庫蔵 文久元年(棟札による)明治42年・大正10年・大正14年修理
設 計:不明
施 工:店蔵 細野弥太郎(大工)
母屋 不明
文庫蔵 不明
構 造:店蔵 木造(土蔵造)2階建
母屋 木造2階建、和小屋組
文庫蔵 木造(土蔵造)3階建
※営業中のため通常内部の見学はできません。
(スクランブル調査隊 佐藤里紗)
ユニバーサルデザインということばを最初に用いたのは、
アメリカの建築家ロナルド・メイス(1941-1998、ノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンター長)です。
メイス自身、幼少時にかかったポリオが原因で障がいをもち、酸素吸入をしながらの車いす生活を余儀なくされながらも、誰もが使いやすい建築や道具、機器のあり方やプロダクトの研究を進めました。
バリアフリーというと、障がい者や高齢者などの円滑な移動に配慮した施設整備や建物整備に着目しがちです。
しかしメイスはその対象を健常者にも拡げ、ものづくりの段階から「すべての人にとって、
できる限り利用可能であるよう製品・建物・環境をデザインすること」をめざしました。
また、障がい者だけを特別視する「デザインの変更や特別仕様のデザインが必要なものであってはならない」と考えます
(以上、ユニバーサルデザインセンターの定義から)。更にハード整備だけではなく、思いやりや優しさといった「心のバリアフリー」などのソフト面での大切さにも触れています。
メイスは、これらの考えを「ユニバーサルデザインの7原則」として以下のようにまとめました。
また、持続可能な住宅のあり方として、居住者自身の高齢化等に対応できるような仕掛けや仕組みを住宅に組み込む
「アダプタブルな建築」の考え方も提唱しています。
1(公平性)誰もが平等に利用できる
2(柔軟性)あらゆる人に応じた使い方が選択できる
3(単純性)使い方が直感的に理解でき、簡単
4(わかりやすさ)必要な情報が容易に理解できる
5(安全性)危険がなく、安心して利用できる
6(省体力)無理な姿勢をとることなく楽に利用できる
7(スペース確保)利用するのに適切な広さと幅がある
(国土交通省HPから)
すなわち「すべての人々に対し、その年齢や能力の違いにかかわらず、大きな改造をすることなく、
また特殊でもなく、可能な限り最大限に使いやすい製品や環境のデザイン」がメイスの提唱するユニバーサルデザインの定義なのです。
このことは、建築士である私たちの目指す「持続可能な誰にでもやさしい建築」を的確に表したことばではないでしょうか。
わが国では、平成13年に閣議決定された「高齢社会対策大綱」で「ユニバーサルデザインの普及をはかる」
ことが謳われる一方、平成18年に閣議決定された「住生活基本計画」では、
高齢者(65歳以上の者)の居住する住宅のバリアフリー化率を、平成27年には25%とすることを目標に掲げています。
ですが、現状は「取組み半ば」というのが実情です。その目標年次である
平成27年、本号では「持続可能で誰にでもやさしい建築」を目指す建築士の仲間たちのさまざまな活動について特集しました。
(SALON編集部 小笠原 泉)
横浜市営地下鉄ブルーラインの中川駅から徒歩2分の場所に多機能住宅展示場「ハウスクエア横浜」があります。ここはモデルハウス、住宅設備機器等の最新情報から相談コーナーまで揃った、日本唯一、最大級の総合住宅展示場です。
技術支援委員会福祉部会ではこの展示場内にある「住まいづくり体験館」において、
平成21年7月4日に「ミニセミナーと体験研修」を行いました。
ここではシニア体験として、高齢者擬似装具を装着して浴槽に入ったり、便器に座ったり、スロープ・階段を登り降りしたり、
ドアを開け閉めしたりして加齢に伴う障害を体験しました。
右の写真はそのときの模様で、衛生機器の使い勝手を確認、検証しました。
この高齢者疑似体験は現在も行うことができますので、次の機会があればぜひまた研修に利用したいと考えております。
この「住まいづくり体験館」がある「住まい情報館」には約30社のショールームがあるほか、
住まいの相談コーナーなど住まいづくりの情報が充実しています。また、敷地内には26区画の住宅展示場が並び、
彩り豊かな街並みを構成しています。この展示場には、ユニバーサルデザイン・バリアフリーを含め私たち建築の専門家にとって
有益な情報が多く得られると思いますので、もしお時間があるときにでも、ぜひ立ち寄ってみてはいかでしょうか?
(技術支援委員会福祉部会 下村 旭)
●ハウスクエア横浜
〒224-0001 神奈川県横浜市都筑区中川1-4-1
TEL:045-912-4110 FAX:045-912-4711
営業時間:10:00~18:00
休館日:毎週水曜日(祝日を除く)
http://www.housquare.co.jp/
福祉部会は技術支援委員会に設置された部会として、高齢者や障がい者の特性を理解し、
理学療法士などの専門職や様々な団体と連携して建築士の視点で高齢者や障害者への支援の方法を考え、
これを地域のなかで生かす活動を行うことを目的としています。
福祉部会の歴史は長く、1990年4月から女性委員会の部会として活動がスタート、
2003年3月には技術支援委員会福祉部会として設立が承認され、今に至っています。主な活動として、建築士会会員を対象とした福祉に関連するテーマの研修会や部会のメンバー相互のスキルアップを目的とした
研修会等の開催、他団体との連携交流その他多岐に渡った活動を行っております。2014年度はユニバーサルデザインに配慮したサイン計画に関する研修会、四年目となる
専門職の連携による住宅改修ワークショップ、そして「建築士としてこれだけは知っておきたいバリアフリー」研修会も開始しました。
2015年度は社会的に深刻化している介護の再入門をテーマに、高齢者・障がい者の住宅や施設について、
より知見を深めるべく研修会や見学会を行い、そしてまた、ユニバーサルデザイン、バリアフリーの
考え方を広めていくことを行っていきたいと考えております。
さて、ここでユニバーサルデザイン、バリアフリーの考え方を広めていくということですが、
多くの方々は今ではそれくらい常識だと思われているかもしれません。
確かに近年、超高齢社会の到来に伴い、家族の構成が変化し、
サービス付き高齢者住宅や有料老人ホームなど住まいの多様化が進み、
一般の住宅を新築するときも段差の無いことが当たり前になりつつあり、当初からバリアフリー住宅として建てられる場合もあります。しかし、加齢に伴って身体機能はひとそれぞれに変化していきます。この変化を予測し、または変化に応じて住環境を考えていくことがユニバーサルデザインあるいはバリアフリーの考え方につながっていくのであり、単にマニュアル通りの設計ではなく、その「人」に応じた配慮が必要となります。そのための基本的な知識や技術、情報
を学び、そして広げていくことが大切なのだと考えております。もし少しでもユニバーサルデザイン、バリアフリーに関して興味や疑問、質問等ありましたら、
ぜひ福祉部会に顔を出されてみてください。一緒にユニバーサルデザイン、
そしてバリアフリーについて一緒に考えてみませんか?お待ちしております。
(記事:技術支援委員会福祉部会 下村 旭)
1月24日(土)、25日(日)、相鉄線二俣川駅コンコースで公益社団法人かながわ住まいまちづくり協会(まち協)と一般社団法人住宅リフォーム推進協議会(リフォ協)により、
住宅リフォームを推進するイベント「暮らしフェア」が行なわれました。「暮らしフェア」では住宅リフォーム相談会が行われ、まち協所属の建築士(神奈川県建築士会会員)が交替で相談にあたりました。
駅改札前の通りすがりでじっくりリフォーム相談というわけにはなかなかいきませんが、
中立公正な立場で相談を受けることができ、わかりやすいパネル展示や参考資料も豊富に
用意されていました。住宅リフォーム講習会も二日間行われ、25日の講習会を取材してきました。
教材は国土交通省住宅局が作った消費者向けの「住宅リフォームガイドブック」で、リフォームすることでバリアフリー対応や省エネで使いやすい設備機器への更新ができる、ライフスタイルに合わせることや、劣化の補修や性能の向上が望める等、リフォームで何ができるかを解説。そしてリフォームの進め方とどんな支援制度があるか、減税・融資・補助についてなど講師の方からたくさんの情報提供がありました。
消費者が漠然と持っている不安や心配(悪質業者やリフォーム詐欺など)についても、
安心してリフォームに取り組める情報が得られる講習会でした。
(取材:SALON編集部 佐藤 里紗)
最初に。私は資格として、一級建築士、福祉住環境コーディネーター、福祉用具専門相談員を持ち、実務として、高齢者、障害者の個人住宅改修、認知症、高齢者・障害者児のための施設やホーム・病院等の設計に携わってきた。この十数年で法律も変われば人の考え方、捉え方も換わった。私たちは必ず将来、高齢者になる。親も高齢になり、それなりの住まい方を考えなければならない。介護保険制度が出来て住宅改修はかなり身近な出来事になってきた。
しかし一方、障害者に対しての、建築的なものはまだまだと言っていいと思う。とくに障害児をかかえる家庭に対しての建築的手法は暗中模索の最中である。独り暮らしの若い障害者に対しても同様である。障害も様々であり、マニュアルといったものは存在しない(出来ない)。住まいにおいての不都合は人様々であり、天候や時間にも左右される。建築士がいかに知識を持ち、かつ個々、当事者にいかに近寄れるか、が非常に重要となってくる。
「福祉住環境コーディネーター」のテキストはとてもよく出来ており、単なる建築的な手法だけでなく福祉用具等の道具についてや、病気・障害、そして心構えについてもかなり多くが学べるようになっている。一読の価値あり!
マニュアルにたよって住宅改修をするのではなく、
その方の周辺にもよく向き合いながら一歩一歩進めていかなければならないといつも思う。
(記事:技術支援委員会福祉部会 吉原 直美)
設計に携わる建築士の方々は既にご承知のとおり、横浜市は平成24年(2012年)12月に福祉のまちづくり条例を改正し、建築物バリアフリー条例と一本化することで、建築物に関するバリアフリーの規定を明確化しました。
この新たな福祉のまちづくり条例は平成26年(2014年)1月1日から施行されています。
また、条例の改正に伴い、良質な住宅ストックの形成や、子育て世代への配慮など、
大きく変化している社会環境に対応するため、整備基準を見直し、
福祉のまちづくり条例施行規則を改正しています。その改正内容をわかりやすくまとめたものが
『横浜市福祉のまちづくり条例施設整備マニュアル(建築物編)』(以下「整備マニュアル」といいます。)です。
なお、この整備マニュアル編集にあたり、神奈川県建築士会会員も委員として参加しています。横浜市では、これまでハートビル法(平成6年)の改正を受けて策定されたバリアフリー法の委任条例として「建築物バリアフリー条例」がありましたが、新たな福祉のまちづくり条例改正によりこれを廃止し、新たに福祉のまちづくり条例に一本化しました。
これにより、横浜市で建築物の設計・建築を進めるにあたり事業主や建築士が
留意しなければならないポイントが変更されています。
以下、その点について簡単にふれることにします。
ポイントの第1は、建築物全般の整備基準を見直したことです。
条例の一本化に伴い、バリアフリー法に基づく「建築物移動等円滑化基準」を福祉のまちづくり
条例施行規則に盛り込んだことです。
また、従来の『施設整備マニュアル』に記載されていた整備基準の解説等のうち、
遵守すべきものを「指定施設整備基準」に追加しています。
第2は、ベビーチェア・ベビーベッド・授乳ができる場所・おむつ交換ができる場所を
設置する規定を新たに盛り込み、子育て世代に配慮した環境設備の規定を追加したことです。
第3は、共同住宅の整備基準の見直しです。条例改正により、2,000㎡以上の共同住宅を
バリアフリー法に基づく特別特定建築物に追加し、建築確認における審査対象に位置づけることで
バリアフリー化を義務付けしています。また、バリアフリー法に基づく基準に加え、
階段や手すりやエレベーターの音声案内の規定等を追加しています。
第4は、福祉のまちづくり条例の用語の定義や用途の区分をバリアフリー法と整合させ、
従前よりわかりやすくした点です。
第5は、増築や用途の変更をする場合、「指定施設整備基準」においても既存部分のバリアフリー化を
求めるなど、適用対象を見直したことです。
このように、今回の改正では対象を障がい者の方々だけでなく、
子育て世代・高齢者など幅広い世代にも広げていった点を特長としてあげることができます。
横浜市福祉のまちづくり条例の理念は、「横浜に関わる全ての人が安心して、
自らの意思で自由に行動でき、様々な活動に参加できる人間性豊かな福祉都市の実現の
ための基本的施策を定めたもので、障がい理解、思いやりの醸成などのソフトの取組と、
誰もが安心して利用できる施設の整備というハードの取組の両輪で推進することを基本」
としています(『整備マニュアル』から)。この理念に基づき、ひとりでも多くの建築士が、
バリアのない誰にでも心地良い建築を生み出していくこと目指して活動されることを願ってやみません。
(文責:SALON 編集部)
1月23日(金)、藤沢商工会館で新年交流会を開催しました。
第一部は被災地住宅相談活動(キャラバン隊)研修会として、
本会の防災委員会から東委員長・長井副委員長・雨森担当理事を迎えて、
参加者数35名、支部既登録キャラバン隊員24名のうち13名の出席者がありました。
パワーポイントによる画像と配布資料を併用した説明に「分かり易かった」
「地震災害の怖さを改めて認識し有意義であった」などの意見をいただきました。
また実際に現地相談員として活動した経験者による体験談をもとにした説明には説得力があり、
貴重な研修会になったのではないかと考えます。
新たな隊員を募集している旨のPRをさせていただきました。
第二部は支部会員相互の懇親の場となる交流会で、31名の出席者を迎え大いに盛り上がりました。立席形式ながらグラス片手に料理を食しながらの懇談は、体力勝負でもあり持久力を試す絶好の機会。会員数が減少する中での、苦渋の選択である会費値上げの動きに対する意見開陳、2015年の建築界の動向予測、これからのアベノミクス効果の成否、はてまた5年後の東京五輪に対する抱負などを老若男女の会員が語り合い、予定された時間はあっと言う間に過ぎて、山口元支部長による正調三々七拍子で新年交流会をお開きとしました。
企画・開催に関わった関係者の方々、お疲れ様でした。
左記の画像は、今から27年前、県庁庁内紙の 本庁舎60周年特集に掲載されたコラムです。記事では、県内の国指定重要文化財は、県立博物館のみとなっていますが、今日まで近代洋風建築ではさらに3件(開港記念会館、旧内田家住宅、福住旅館)が追加。ところが、昨年12月、名古屋市庁舎・愛知県庁舎が突如として重文の指定を受けました。1月15日(木)、県庁本庁舎旧議場で開かれた支部セミナーは、他支部からの参加も含めた約30名の熱心な参加者を迎えました。講師は、支部会員の村島正章さん(県庁総務局施設整備課長)。今や、本庁舎見学会の案内役としては右に出る者のない存在です。この日、村島講師の解説が、いつにもまして火の出るような熱を帯びたのは、おそらく愛知に先を越されたということもあったのでしょう。本庁舎の完成が昭和3(1928)年、名古屋市庁舎は昭和8(1933)、愛知県庁舎は昭和13(1938)年。帝冠様式のはしり、「我国風」を実現した庁舎としては神奈川が先輩格です。後藤新平、佐野利器、池田宏、小尾嘉郎など、本庁舎に間接・直接の縁のあった関係者のエピソードも、十二分に紹介してもらいました。本庁舎塔屋が、神道、仏教、キリスト教の礼拝所として利用されていたのも初めて知りましたが、村島講師は伊勢山皇大神宮まで赴いて神職派遣の裏付けを取った由。脱帽です。 圧巻はその後の庁舎見学。ありとあらゆるディテールに詳細な解説が降り注ぎました。支部の力だけでは困難でしょうが、近い将来、重要文化財の指定を受けることができたら、ほんとうにいいですね。
いま重要な岐路にあるヘリテージマネージメント活動(以下「ヘリマネ活動」)について報告します。ヘリマネ活動は、大きく2つからなり、それが車の両輪となっています。1つ目がヘリマネ養成活動であり、平成26年度末現在で約190名を輩出するに至っています。2つ目が歴史的建造物の保全や歴史まちづくりに関する活動です。ただ、2つ目の保全活動については、具体の成果が目に見える形で現れるものが少なく、活動の活性化が課題となっています。また、ヘリマネ活動自体の次世代の担い手への継承も課題です。 ここへきて、当初の養成目標人数150人の達成により県が27年度から予算措置は出来ないとしたため、特にヘリマネ講座は岐路に立っています。また、誠に残念ですが講座の校長の西和夫先生が1月に急逝されヘリマネ講座・活動は大きな支えを失いました。 ここで思い出されるのは、ヘリマネのトップランナー兵庫士会の沢田伸さんから伺ったことです。兵庫の第1回ヘリマネ講座の最終日最終コマの終了時、会場は何とも言い難い、異様な雰囲気に包まれたそうです。これでヘリテージマネージャーとして社会に放り出されるのかといった、期待と不安ないまぜの、というよりはむしろ不安のほうが強い、心持だったそうです。これまで、神奈川県のヘリマネはモラトリアムの時期にあったと思います。ここにきてやっと自分たちで主体的、主導的に取り組まないとならなくなりました。 これらの状況を受け、昨年12月に約90名のヘリマネが発起人となりヘリマネ養成を含むヘリマネ活動の推進を目的とした「神奈川県ヘリマネ協議会」の設立を目指すこととなり、現在は有志による準備会で協議会設立に向けた検討を進めているところです。 これまで育ててきたヘリマネ活動の火を絶やさないため、既に活動されている皆さんはもとより、このたび初めて興味を持って頂いた皆さんも是非ご協力ください。
研修旅行は平成26年11月29・30日「遠州三山と森町周辺散策」を22名の参加で行われました。 初日は朝から変わり易い空模様で、最初の訪問地三保の松原に着いた時は大雨。 昨年ユネスコの世界遺産に登録された富士山を一番美しく眺められるはずのスポットが 灰色の雲だけが広がる景色で、一同些か気落ち。しかし次の訪問地、登呂遺跡では雲ひとつない晴天。 弥生時代の稲作農耕集落遺跡を再現した住居や倉庫、周りに広がる水田を散策。 木の棒と板を擦り合わせる火起し体験など、古の生活に想いを馳せた一時。 次は、白井晟一設計の静岡市立芹沢銈介美術館「石水館」。石、水、木をふんだんに使った広々とした 空間に芹沢銈介の色彩豊かな紅型染作品や世界各地の民芸コレクションが並ぶ。 最後は、油山寺、法多山と並ぶ遠州三山の一つ、火防総本山・秋葉総本殿「可睡斎」。 禅林600年の歴史の曹洞宗屈指の名刹。見事な大広間や襖絵を見学。第二日目の最初は藤森照信設計の秋野不矩美術館。丘の上に佇む藁入りモルタルと天竜杉の調和が美しい美術館である。内部は藁入り漆喰の天井と壁、籐ござの床が和の美と落ち着いた暖かさを感じさせる。当地が生んだ女流日本画画伯の作品を一段と引き立てている。昼食は復元された掛川城を窓越しに臨みながら戴く。最後の訪問地は、清水の次郎長で名高い「森の石松」の墓がある橘谷山・大洞院。ボランティアガイドの 遠州弁が耳に残り、正に見頃の紅葉が瞼に残る思い出深い旅の締め括りでした。
会費値上げ改定案が3月の臨時総会にかけられます。
会の財政状況は相当に厳しい中で、活動費を充てている当委員会は今後より一層知恵を
絞って多くの参加者を募れる魅力ある講習会等を開催していく所存です。
昨年8月8日に引き続いて9月6日に第二回「カラーユニバーサルデザイン サイン計画研修会」を開催いたしました。以下は参加された子どもの生活環境部会の部会長をされている関口佐代子さんの感想です。「今まであまり身近に感じていなかった『カラーユニバーサルデザイン』でしたが、数多くの事例に携わっている講師の桑波田氏のお話を聞くことができ、公共施設や病院など生活に密着した場での必要性や現在の状況を知ることが出来ました。よく耳にする「バリアフリーからユニバーサルへ」という視点の変化だけでなく、具体的な計画のプロセスや実験方法、その結果の反映など実際にデザインされた建物の例を通しての説明は大変理解しやすかったです。『家具はある人々にとっては障害物となるので目立つ色にしている』『最近の大型の照明のスイッチは全盲の方にはオンオフがわかりづらい』などのお話もなるほどと思いました。サインだけでなく全体の動線をユニバーサルにデザインするということがいかに大変で、しかしとても重要だと気づかされた研 修でした。」その他、今年度の福祉部会の活動として、2月14日に横浜市総合リハビリテーションセンターにて『建築士としてこれだけは知っておきたいバリアフリー』研修会 第1回「理学療法士の視点から学ぶ、住環境整備へのヒント」~評価や介助方法の体験を通して~が開催されました。この報告は改めての機会に行いたく思います。また、来る3月14日に情報文化センター小会議室にて「住宅改修ワークショップ」を行います。高齢者の住宅改修を題材に理学療法士、作業療法士及びケアマネジャーとの交流と図り、スキルアップにつなげることを目的に行います。住宅改修の実務者はもちろん、興味のある方も歓迎しておりますので、ぜひ気軽にご参加いただきたくよろしくお願いいたします。
木造塾部会では、昨年末12月6日に今年度 第2回の木造塾講座 「 ヤマベに学ぶ 限界耐力計算、活用への第一歩。」を行いました。今回の講義の前半では、まず、構造のルートとして限界耐力計算がどのような位置の検証方法なのかという話から始まり、剛性率、偏心率、許容応力度計算、壁、床、仕口等接合部といった木構造の基本的な内容のおさらいの部分を丁寧に解説いただくところから話が始まりました。これらの基本的な内容がどう限界耐力計算に繋がるのか?と疑問に思った参加者も多かったと思いますが、「限界耐力計算は検証方法であり、検証する建物の構造がきちんと成り立っていることが前提であること。」という中盤の講師の山辺先生の説明を通じて、あらためて前半に学んだ構造計画の基本の重要さを見直した参加者も多かったと思います。その後、限界耐力計算により検証を行う上で、「前提条件が固まっても、1質点に置き換えるうえで注意すべき形状の建物が存在すること。」の説明をいただき、その活用事例を、実例を通して御解説いただきました。限界耐力計算の基礎的な考え方を理解するうえで、非常に分かりやすい講義になっていたのではないかと思われます。なお、木造塾部会では来る3月7日に「心」を込めた木造への挑戦と題し、今年度最終回の第3回木造塾 を行います。独自に行われている木材の水中乾燥や、特許まで取られた挟み梁構法等、TV番組等で取り上げられその取り組みが有名になりましたが、滋賀の宮内建築の宮内寿和氏を講師に招聘し、また新たな木造の可能性にスポットを当て、お話を拝聴したいとおもいます。 今後の木造塾部会の活動に、ご期待ください。
幅広い会員の皆さんの声をうかがう「さろん」。
今回は、昨年入会されたばかりの県庁職域支部竹内さん、そして本業の他、
被災地支援でも活躍中の川崎支部木津努さんから寄稿をいただきました。
①入会のきっかけは
所属する公共住宅課の上司から勧誘を受け、入会しました。
②入会してよかったことは
前職は設計事務所に勤めていて、経験者採用で今年度の4月に神奈川県に入庁しました。
入庁したばかりで知り合いも少ないため、建築職の方と知り合う機会が増えてよかったです。
③そもそも建築を志した理由は?これからどんなことをやりたい?
建築学科を卒業する時に、実際に建築を職業にするか迷いました。中途半端な気持ちでやっていける業界ではないと思ったので、
建築と関係ない会社に勤めてもう一度建築をやりたいと思ったら戻ってこようと決めました。結局、設計事務所に転職し、独立して仕事をしていくことも視野に入ってきた時に、
建築は心から面白いと思えるようになりましたが、自分の作品をつくりたいという強烈な自己顕示欲が私には
足りないのではないかと感じました。公共建築の設計の仕事が多かったことから、県の職員さんや職場の雰囲気に接する機会もあり、
働きやすそうな職場だなと思って、職員採用試験を受けました。入庁して約1年がたとうとしていますが、
職場の先輩や同僚に恵まれ、充実した日々を過ごしています。
今まで培ってきた建築の知識と経験をいかして、
笹子トンネルの事故がきっかけとなった、公共建築の老朽化の問題に取り組んでいきたいと考えています。
今年の春で独立して丸5年が経ちます。設計事務所勤務時代と異なり、個人のつながりが必
要と思い、早いうちに入会しました。とはいえ、まだまだ士会の活動に参加している感じではなく、会報などを斜め読みしているのが正直なところです。業務の忙しさもありますが、他の会員の活動を「知る」ことで、10あるうち1つでも「これは」と思う興味に期待している感じでしょうか。
今は、本来の業務以外にずっと続けていることがあります。趣味の楽器演奏と東日本大震災以降の町を見続けること。
10年ほど前、設計業務が大変忙しい時期にあえて趣味を始めました。
「このままではいけない」という事からでしたが、続けていたことで東日本大震災の被災地での演奏のお話を頂き、
有志数名で初めて訪れることができました。最初の訪問地は宮城県女川町。その後、縁あって石巻市でも演奏させて頂きました。
今は楽器を持参しませんが、個人的に年5、6回は女川町へ遊びに行き、忘年会、お正月の獅子ふりやお祭りに参加したりしながら、津波で失われた町が、住民自身でつくりあげられていく「時」に寄り添っています。
3月は東日本大震災から丸4年。女川町にも新しい駅が完成して鉄路が再開されます。
当日は会場で町のお祭りに参加していますが、
こんな会員がいることを知って頂き、士会のご縁が広がればうれしいです。